葡萄栗鼠
松林桂月(まつばやしけいげつ) 1876-1963 1936(昭和11)年 紙本墨画淡彩 六曲一隻屏風 199.0×446.0 平成10年度購入
解説
葡萄や栗鼠は、多幸・多産を象徴する吉祥図として、あるいは〈武道・律す(立す)〉に通じる画題として古くから採り上げられ、松林桂月の作品には初期から晩年に至るまで幾度となく登場しています。この絵では、竹に絡みついた葡萄の蔓が左下へ伸びながら、右手の倒れそうにしなる竹に再び巻きついて、視線が右から左へ流れるような構図となっています。竹の剛健な直線と蔓の繊細な曲線が対照的に描かれ、中央の不安定な蔓を走る栗鼠は画面に動感を添えています。また、東洋画特有の表現である余白からは、空間的な広がりや余韻といったものを感じることができるでしょう。葡萄の葉などには桂月が得意としたたらし込みの技法が見られ、微妙なにじみによる墨の濃淡が表現に写実性を加え、作品に近代性を与えています。画面右下に〈昭和丙子春晩写 桂月山人篤〉の年記と落款があり、昭和11年の制作であることがわかります。この記事は 2014年02月12日に更新されました。