人体による作品
星野眞吾(ほしのしんご)1923-1997 1966(昭和41)年 紙本着彩・箔 122.2cm×91.6cm 個展(東京・日本画廊)出品 昭和60年度購入
解説
星野の画業を語る上で欠くことのできない「人拓」作品には、父親の死が濃い影を落としています。死して後の肉体の消失、時間とともに薄れゆく記憶に対し、存在の形跡を残したいという強い念が作家を強く突き動かしたのです。糊を塗布した身体を和紙に押しあて、顔料をまぶすという独自の行為はそれまでの描く行為を否定し、一方で日本画の素材の特質を可能な限り引き出した全く新しい表現手段でした。 この人拓作品は顔料がまだ単色にとどまっており、中心の人体も自らの肉体を用いたものでなく、さらには和紙のコラージュや円形のモティーフといった人拓以前の様式がみられるなど、初期の様式を伝えるものです。画面下部に足の裏からみた棺を据え、そこを起点に魂が千手を得てまさに昇天する瞬間を描いています。シンメトリックな構成で荘厳な宗教画を思わせまるこの作品は、「喪中の作品」シリーズに連なる、鎮魂の画に位置付けられます。 出品された第24回パンリアル展では両側に脇侍仏のように《人・人・人・人》という作品群を配して展示されました。この記事は 2014年02月12日に更新されました。