路・波の国から

平松礼二 1992(平成4)年 紙本着彩・二曲一隻屏風 165.0×168.4 平成12年度購入

路・波の国から

路・波の国から

解説

青龍社で横山操を目標に日本画家として歩み始めた平松礼二は、青龍社の解散・横山操の死によって一時制作を中断している。再び絵筆をとったのは1976 年の春季創画展からであり、翌年には「路」を主題とする作品によって第4回創画展で創画会賞を受賞した。これは韓国で眼にした土まんじゅうが点在する光景に触発されたものであり、以後平松のライフワークとなる「路」シリーズとして発展していく。当初の「路」は暗く沈んだ色調で林間のまばらな集落を俯瞰した構図が多く、うっすらと夜明けを予感させる画面は目標の喪失感から、何かを探し求めて彷徨する作者の心情が投影されたものとなっている。やがて冬枯れの樹木に混じって鮮やかな色彩が置かれるようになり、山種美術館賞を受賞した頃から画面には華やかな装飾性が加わるようになった。この《路・波の国から》はそうした平松様式の完成期の作品であり、林間を抜けて眼前に開けた田園風景に桃の花が咲き乱れ、紺碧の空に満月がかかるという夢幻的な光景が広がっている。「路」シリーズがもはや彷徨の道程でなく、安定し充実した到着点に行き着いたということであろうか。 以後、平松の「路」は横山風の力強い風景やビルの林立するNEW YORKシリーズなどの展開をみせ、近年では印象派・ジャポニズムをテーマに精力的な制作活動を続けている。 当館では名古屋で少年時代を送り、豊橋の大学で学んだ平松を今回郷土ゆかりの日本画家として収集対象とし、この《路・波の国から》のほか、寒々とした林間の路を描いた《路-路生》も収蔵している。

この記事は 2014年02月12日に更新されました。

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