27のパターン
下村良之介(しもむらりょうのすけ)1923-1998 1963(昭和38)年 紙・紙粘土・着彩 182.5×364.9 第6回個展(日本橋・白木屋)出品
解説
下村良之介は鳥を主要なテーマとして描きつづけた画家です。昭和23年、三上誠、星野眞吾ら京都市立絵画専門学校日本画科卒業生によってパンリアル美術協会が結成されると下村も創立会員として参画し、ともに伝統や既成概念を打破する日本画の可能性を探究していきました。当初は戦後社会の悲惨な現況をキュビスム的な手法によって描きだしますが、そうした群像の中にもすでに夜明けを告げる鶏などがみられます。やがて形象の構築が<面>から幾何学的な<線>に転じると、モティーフも鳥が主体となり、鋭角的な嘴と曲線の羽をもつ形態がつきつめられました。昭和34年より線描は象形文字のように抽象化され、紙粘土と和紙で形象をモデリングするという独自の創作様式に移行します。それは日本画のみならず絵画をも逸脱する行為でしたが、<線>という日本画の根源に向かうものでもありました。やがて銅鐸に浮き上がる刻印のような線描が発展し、代表作となる壮大な鳥のシリーズに至ります。太古の化石や滅び去った文明の壁面装飾をおもわせる画面は、土壁のような黄土や青銅器色に塗られ、線はより複雑化して装飾性を帯び、さまざまな文様や判型が刻印されて独特のマティエールと密度を生み出していきます。この後、闘鶏屏風や舞妓などを<描く>行為に移りますが、昭和58年頃より再び半立体的な鳥の連作に回帰しました。 星野をはじめとする創立会員がパンリアル美術協会を去ったなか、最後まで同会にとどまり、会の中心的な役割を果たしますが、平成10年に逝去しました。この記事は 2014年02月11日に更新されました。